ハルバッハ配列による高効率モータの実現

- 高効率と小型化を実現する革新的磁気配列 -

実用化達成基準と成果物イメージ

1980年代、Klaus Halbach氏が磁石配列にハルバッハ配列を発明し特許化した。、当初、電子ビーム加速器などに利用されたが特許権が消滅すると同時にモータ、リニアモータなどの利用ができるようになった。
ハルバッハ配列で構成された磁界の特性
(1) 配列で形成された磁界は、一方の面の磁束密度分布の強度は倍増
(2) 裏面から出る磁力線が無い
(3) 磁束密度分布が正弦波状である。

磁石片側に磁界が集中

ハルバッハ配列

ハルバッハ配列

磁界が磁石両側に広がる

N-S配列

N-S配列

着磁方向が90度の場合のハルバッハ配列と磁束密度分布が正弦波状を示す。

磁束密度
ハルバッハ配列の形態(着磁回転角45degの場合)
ハルバッハ配列の形態(着磁回転角45degの場合)

ハルバッハモータに使わているコイルと従来形モータに使われているコイルの模式図

鉄心有りと無い場合の磁束鎖交数を理論的に比較すると次のようになる。

ハルバッハ配列と小判形空芯コイル

  • 小判形空芯コイルの磁束鎖交数 Y
    • 小判形空芯コイル ⇒磁束鎖交数 永久磁石残留磁束密度
    • 鉄心コイル ⇒磁束鎖交数 飽和磁束密度×コイル窓面積
ハルバッハ配列と小判形空芯コイル

コアレスとコア有りの磁束鎖交数を比較すると次のようになる。
鉄心の磁気飽和が始まる磁束密度が1Tなら、ハルバッハ配列がコイルに鎖交させる磁束の平均磁束密度の最大値は、0.5Tで同等となる。
 実際には永久磁石残留密度の0.7倍以上がコイルに鎖交する。
ハルバッハ配列でコイルに鎖交する磁束の平均磁束密度の最大値は鉄心の飽和磁束密度の半分で良い。この事は、ハルバッハ配列でコアレスコイルを利用した場合の利点である。

  • 小判形空芯コイルの磁束鎖交数
    • 現在の出力密度でパーメンジュールを用いた従来形モータに匹敵。
小判形空芯コイル

Bm: 最大磁束密度,Bs: 飽和磁束密度,t : ポールピッチ
Nc: コイル巻回数,ld:コイル奥行

小判形空芯コイルの磁束鎖交数

パーメンジュールを従来型モータに用いた場合、ハルバッハ配列界磁では永久磁石の残留磁束密度Brの0.7倍以上がBmになるので、Brが1.3Tであれば飽和磁束密度が始まる磁束密度が1.8Tのコア材を用いた従来形モータの出力密度に匹敵することになる。
小判形空芯コイルの巻線の太さと循環電流損は、次のようになる。

ハルバッハ型発電機を開発した時の解析結果
発電機 回転数 300rpm 200w
導線(1.5mm)1本あたりの損失 0.037(W)
コイル1個あたりの損失 3.09(W)(巻回数 84)
発電機の損失 74.11(W)(コイル数24)
このデータから銅線の線径を0.2㎜から0.1㎜とし、リッツ線にしてモータの開発に取り組んでいる。

過電流損失

このように改良を加えた結果、損失の低減を実現でき、効率も小型モータでも95%以上を実現できた。
最後に、高効率を実現できた同時に、コギング等の機械的振動が無いので静かな回転を実現できた。
定格出力 64kw、回転数15,000rpmのモータの特性を示す。

効率マップ
効率マップ
加速度センサーによる加速度計測結果
加速度センサーによる加速度計測結果